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【回顧録】お笑い戦士2003:地上波が「異界」に繋がった夜

今から20年以上前、2003年9月22日。まだ『アメトーーク!』が深夜の深い時間帯で、テレビの「実験場」だった頃。その歴史の中でも、異彩を放ちすぎて語り草となっているのが**「お笑い戦士2003」**の回です。

この回の出演陣の名前を見るだけで、当時を知るファンは震えます。 村上ショージ、テント、島田珠代、出川哲朗、上島竜兵、春一番、神奈月。 まさに、お笑い界の「猛獣」「妖怪」「職人」たちが一堂に会した、奇跡の夜でした。

1. 「天然記念物」テントという衝撃

この回の主役は、何と言っても「人間国宝」テントさんだったと言っても過言ではありません。 テレビ出演そのものが稀有だったテントさんが、あの独特すぎる「必殺技」を引っ提げてスタジオに現れた時の衝撃。宮迫さんが「何なんですか、それは!」と膝から崩れ落ちる横で、テントさんは淡々と、しかし狂気を孕んだリズムで芸を披露し続けます。

「蜘蛛の糸」や「パントマイム」を駆使した、説明不可能な笑い。それは計算されたネタというより、テントさんという生き方そのものが露出しているような、凄まじいエネルギーでした。

2. 村上ショージと「スベりの聖域」

そのテントさんと並んで鎮座していたのが、村上ショージさん。 今や「スベり芸」という言葉は一般的ですが、当時のショージさんの破壊力は別格でした。放たれるギャグがことごとく空気を凍らせ、その氷点下の空気をショージさん自身が楽しんでいるような、あの不敵な笑み。

「ドゥーン!」一つでスタジオを制圧し、後輩たちがどれだけツッコミを入れても、暖簾に腕押し。テントさんとショージさんという「吉本の二大最終兵器」が並んでいる光景は、まさに笑いの聖域でした。

3. 肉体を武器にする戦士たちの乱舞

一方、リアクションとフィジカルで戦う戦士たちも負けてはいませんでした。 出川哲朗さんと上島竜兵さんのツートップ。当時は今ほど「愛されキャラ」として確立される前で、より「芸」としてのリアクションに命を懸けていた時期です。熱湯風呂や熱々おでんといった定番の向こう側にある、二人の阿吽の呼吸。

そこに島田珠代さんの破壊的な女子力が加わります。 壁に激突し、男芸人にしがみつき、スタジオのセットさえも武器に変えて暴れ回る珠代さん。女性芸人という枠組みを完全に破壊したその姿は、まさに「戦士」そのものでした。

4. 猪木イズムとプロレス的カオス

さらに、春一番さんと神奈月さんという「憑依型」の二人が、スタジオのボルテージを一段階引き上げます。 春一番さんの、魂を削るようなアントニオ猪木。神奈月さんの、相手を置き去りにする武藤敬司。 この二人がいることで、番組は単なるトーク番組から「格闘技のリング」へと変貌しました。誰かがボケれば誰かが猪木で返し、誰かが転べば武藤がラリアットを見舞う。そこには理屈を超えた「笑いの肉弾戦」がありました。

5. 雨上がり決死隊の、命がけのハンドリング

この猛獣たちを捌く雨上がり決死隊の二人も、まさに戦士でした。 特に宮迫さんの、一瞬の隙も見逃さない鋭いツッコミと、時折見せる「本気で困った顔」。そして蛍原さんの、カオスを温かく(あるいは諦めて)見守る包容力。 この二人がいなければ、放送事故として歴史に埋もれていたかもしれません。彼らがこの猛獣たちを「面白がり、リスペクトする」姿勢があったからこそ、私たちはこの狂宴を心から楽しめたのです。

エピローグ:そして、山崎邦正の涙

番組の最後、この「戦士たちの宴」にトドメを刺そうと乱入してきたのが、山崎邦正(現・月亭方正)さんでした。 しかし、すでに出来上がっていた「最強の戦士たち」の空気感に馴染めず、見事なまでにスベり倒した挙句、追い詰められて本気で半べそをかいて泣き出すという、あまりにも情けない幕引き。

この「最強の戦士たち」の後に、「泣きじゃくる邦正」で終わるという落差こそが、当時のアメトーーク!が持っていた毒気とユーモアの真髄でした。

結びに

「お笑い戦士2003」。 あれから20年以上が経ち、出演者の中にはこの世を去られた方もいます。しかし、あの夜に放たれた「笑いに対する純粋なまでの必死さ」は、今も色褪せることがありません。 コンプライアンスや整った構成が重視される今のテレビでは、二度と再現できない「奇跡の30分」。私たちは、確かにあの日、笑いの最前線を目撃したのです。

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